こんにちは。オクユイカです。
先日「抱え上げない介護(ノーリフティングケア)」についての研修を受けたのでまとめたいと思います。
簡単に言えば、介護施設を中心とした介護現場でリフト等の福祉用具をもっと活用しましょうよ!
って話。
2025年、団塊の世代500万人が後期高齢者になる日本。
介護現場の人材不足など課題も多くある中で、ノーリフティングケアがどう飛躍していくのか気になるところです!!
(文章の中で使っているノーリフトケア・ノーリフティングケア・抱え上げない介護は同じ意味で使っています。)
目次
ノーリフティングケアとは
ノーリフト®とは、オーストラリア看護連盟(ビクトリア州)が看護師の腰痛予防対策のために1998年頃から提言したもので、 危険や苦痛の伴う、人力のみの移乗を禁止し、患者さんの自立度を考慮した福祉用具使用による移乗介護を義務付けています。引用:ノーリフト協会
※ノーリフト/ノーリフトケアは日本ノーリフト協会の商標登録用語だそう。
高知県では、他の県に先駆けてノーリフティングケア宣言をしていて、抱え上げない介護を推進しています。
抱え上げる介護の代償
ノーリフトの研修があると聞いたときに興味がなかった私は一度目は参加しませんでした(^^;)
二度目の話をいただいた時に「じゃあ、ちょっとのぞいてみようかな」そのくらいの軽い気持ちだったんだけど
参加して良かったです。
機械ばかり使うと、人の温かみを感じない。機械導入するのにお金かかるじゃん。っていうイメージも多少なりとも思ったんだけど・・・。
介護を受ける方・介護士双方にとってリフト等の福祉用具の導入はプラスが多いことがわかりました。
「拘縮」は日本にしかないのか?!
高齢者の介護現場のうち、特に特別養護老人ホームや老人保健施設ではよく見かける「拘縮」
拘縮(こうしゅく、英: contracture)は、関節包外の軟部組織が原因でおこる関節可動域制限のことである。生理学的には活動電位の発生の停止により筋が弛緩しなくなる現象。 引用:Wikipedia 拘縮
簡単に言うと、組織が固まって伸びにくくなり、関節の曲げ伸ばしができず曲がったままの状態になること。
施設では、手のひらの間や足の膝裏等にクッションを挟んで拘縮がひどくなるのを防ぐ対応をしていました。
研修を受けて一番衝撃だったのが、「拘縮」は日本にしかない可能性が高いという話。
といっても、デンマーク、ドイツ、オーストラリアを訪れた医療関係者3人の話と日本を比べただけなので「日本にしかない」は盛りすぎのように感じたのが正直なところ。笑
他の国も見たりちゃんとデータをとらないとわからないですよね・・・
だけどノーリフト宣言をしている高知県でもすでに拘縮が改善されたケースが挙げられていたので
ノーリフトが介護を受ける側にとってよさそうなものであるという印象を受けました。
それにしても抱える介護の代償が「拘縮」だとしたら・・・これから人の介護をするのが怖くなります・・・。
抱え上げる介護は介護される側にとって恐怖と緊張感を伴うもの。
私は介護福祉士の専門学校を卒業しています。
介護の授業の中では、介護者・被介護者になって介護をし合って練習します。
寝たきり状態の方を抱えたり、寝たきり状態の利用者の役になったりするわけなんだけど
寝たきり状態の利用者の役になったら感じるのが
抱え上げられるの怖い!
ってこと。
ひぇ~!早くおろしてぇ~
って恐怖を感じるだけでなく、緊張して体がこわばる。
こうやって、介助されるたびに身体がこわばることが拘縮の原因の一つになっているという話だったんです。
確かに、一日に何度も抱え上げられる場面があるからなぁ・・・。
この話の後、同じく特別養護老人ホームで働いたことがある方と
「自分たちの介護が拘縮の原因になっていたのだとしたら、申し訳ないなぁ・・・。」
と一緒に話しました。。。
介護者の腰痛予防としての「ノーリフトケア」
滋賀医大の全国調査によると、介護従事者の8割が腰痛の経験があるという結果がでています。
私自身、重度の障がいのある方の介護をしていた時に、腰痛ベルトをしていました。
平成27年度介護労働実態調査結果についてに掲載されていた「介護従事者の労働条件の不満」の項を見てみると以下のようになっていました。
身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)が30.4%です。
腰痛で退職した方もいるので、腰痛は大問題。
できる限り一人介助をしないようにしよう!二人介助で!という風に言われているけれど、
忙しい時など1人で無理してしまうこともあったし、忙しそうにしている先輩がいても
「手伝ってください」と言いにくいこともありました。(これを気軽に言える職場づくりも大事ですが)
リフトが導入されれば一人で無理せず介助ができるようになるんですかねぇ・・・・。
今はきっと「リフトを装着する時間なんてないわよ!」って思う人もいるかもしれないけれど、
いずれ「人が抱え上げてた時代があったの?!」と言われるような時代が数年後にはくるかもしれませんね。
「消費していた体力」を「心を込めた介護」に繋げる
ここからは私の持論。
利用者さんを移乗するお手伝いをする時や、全介助の人を抱きかかえる時に
介護者も気合いを入れるんですよね、忙しくて疲れている中で「はぁ・・・」っていう気持ちが出てくるときもあった。
ちょっとマイナスな気持ちですね。
その時に消費する「気持ち」を、利用者さんの心のケアに使えるとしたらどうでしょうか。
温かい言葉や温かい態度・表情で他者に接するには心の余裕が必要です。
介護者の心の余裕をうむためにもノーリフトは役立ちそうな予感!!
人材不足を救う・補うための「ノーリフトケア」
頂いた資料によると、ノーリフティング宣言している高知県では
「職員が辞めなくなった。離職率が大幅に下がった」
「昔の人力介護には戻れません」
「ご利用者の笑顔が増えた→職員も笑顔になった」
という声があがったとのこと。
腰痛にならない職場づくりをすることは、職員のストレス軽減だけでなく長く働くことができる職場づくりにもつながります。
「ノーリフティングケアに取り組んでいるかどうかで職場を選ぶようになっていく」
そんな話をしていました。
現状は、やっぱり給料で見ている人が多いのでは?と思うけれど
ノーリフティングケアが浸透していけば本当にそうなるかもしれないですね。
介護現場は課題が山積み!だけどおもしろい
いただいた資料に『「介護職」が辞めた理由』が書かれていました。
1位:人間関係
・問題があってもフォローしてもらえない。相談できない。・世代間ギャップ=価値観の違い
2位:施設・法人への不満
・トップへの不信感 現場を理解しようとしない
・採用時の話と現実のギャップ
・広育はOJTのみ 組織化されていない
・施設設備が整っていない
・利用者からの暴力があっても関与しない
3位:他に良い仕事があった
4位:給与が安い
・安いのは承知の上だが、残業代も出ない。
5位:将来への不満
・先輩の姿が証明している。
どれも、「あ~・・・なるほど」と思うことばかり。
1人の人を育てるのには結構な費用がかかります。
育てたスタッフが辞めてしまったら施設にとってはゼロですし、求人サイトや情報誌に掲載するためにもお金を使っているはず。
雇ったスタッフが長く続けられる環境を作るためにも、そこに費やすお金を、リフトの導入等に使った方が先を考えると良いのかもしれませんね。
だけど、2位に挙げられていた「施設・法人への不満」の中にもあったように、いくら現場が
「これは利用者さんのために絶対いい!」って思っても経営者側にその意識がなかったら実現できません。
特にリフトの導入などにはお金が必要。
「経営」と「理想とする介護」のバランスがきっと大事なんだろうなぁ~。
(・・・そもそも私は施設介護自体にあまり賛成できない派だけども・・・。)
課題がたくさんの介護現場ではあるけれど、私は介護だったり教育だったり直接人と関わり合う仕事のやりがいやたのしさを物凄く感じるので大好き!
今後、介護現場はどうなっていくんでしょうかね。
以上、抱え上げない介護(ノーリフト)についての紹介でした。
オクユイカ(@Saba0m)
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