こんにちは。オクユイカです。
私が特別支援学校で勤務して1年目の初任者だったころの話。
担当していた学年は小学部の低学年だったのですが、ある先輩がしきりに性教育の大切さを教えてくれました。
当時は、教育現場に入ったばかりだったので割といっぱいいっぱいでそこまで頭が回っていなかった・・・というのが正直なところ。
だけど、それから色々なお子さんと出会うにつれて、社会の状況を知るにつれて、性教育の大切さを強く感じています。
残念なことに、私が過去に働いていた場所も、介護福祉士の男性職員が入所者に性的暴行を加える事件がありました。(私が勤務する前の話であり、その後は同性介護が徹底されるようになりました)
起こってはいけない事件です。
・身体的な不自由さがあることで逃げることができない
・「やめて」を伝えることができない
・知的に障がいがあることで、被害を伝えることができない
・求められたら応じてしまいやすい 等々・・・。
お互いに愛し合った上でのことであれば、よいのですが、言いくるめられた結果に・・・であればやっぱりそれも”被害”なのではないかと私は思います。
また、加害者になる可能性として
・間違った情報(アダルトビデオ)を正しいものだと思い込む。
・衝動的な行動をとりやすい 等々
の理由が挙げられます。
もちろん、”知的に障がいがあるから” ”発達障がいがあるから”という安易な見方はしない方がよいですし、
障がいの有無に関係なく人間だれでも加害者にも被害者になる可能性も持っていると考えていますが。
性教育の大切さ
最初の話に戻りますが、その時の先輩の先生が言っていた言葉が
「いやらしいものだと思う前に、正しい知識を」
ということでした。
確かにそうですよね。
正しい知識を教える前に、ネット等で間違った知識を得てしまい、そちらを本当だと思ってしまったら・・・
それからの性教育だと遅い可能性もあります。
自閉スペクトラム症のある方の特性の一つには、一度学習してしまったことや覚えてしまったことをあとから修正することが難しいことが挙げられます。
知的に遅れがある場合、一つのことを理解するのにも時間もかかるし繰り返しての学習が大必要になります。
場を選んで行動することが困難なお子さんであれば、服を脱いで良い場面・服を脱いでいけない場面等も丁寧に伝えていく必要があります。
そのようなことを考えると「小学校低学年では早いのではないのかな・・・」と思っていたとしても、気持ちが変わりませんか?
発達段階に合わせた性教育、絵や写真を活用しながらの性教育がより必要です。
ダメ・イヤだを言える支援を
そして、被害者にならないためには「イヤ」「ダメ」だと言える支援が大切です。
支援の場にいるとよく見かけますし、私も気を付けないとなって思っているのが、
本人が「イヤ」「ダメ」と言っているのに、なんとか説得させようとする場面。
特に学校現場だと一日のスケジュールやすることが決まっているので本人の「イヤだ」を通すのが難しいことも多いです。
なぜ嫌なのかを考えていくことから支援が始まりますが、それを一先ず置いておいて
本人が「イヤ」「ダメ」の気持ちを発信した場合は
「イヤなんだね、わかったよ」「ダメなんだね、わかったよ」 と受け止める場面も必要なのではないでしょうか。
イヤ!と言えること、ダメ!と言えることは大切なスキル。
授業の中で、
他者に性的な行為を求められたり触られる等の嫌なことをされたら「ダメ!としっかり言いましょう」「イヤだと言おう」と学習しても、
それを生活の場面と結びつけることが難しいお子さんばかりです。
支援者がその点を意識して、日常生活の中の様々な場面で発せられる「イヤだ」「ダメ」に対して支援することが大切です。
そして、最近あったのが、思春期に入ったある女の子の自慰行為についての相談。
お母様が今後のことをとても心配していました。
自慰行為に対してどう対応するのか。
障がいの有無に関係なく、自慰行為をするお子さんって時々みかけます。
ただ単純に、なんだか気持ちいいなぁというだけで、性的な知識があるだとか何かを想像してというところまで結びついていない子どもがほとんどの気がします。
定型発達の場合、その後に知識がついてきたり、「見られたら恥ずかしいんだ」という”恥”の気持ちが芽生えてくると、人前ではしなくなるようになります。
それが、知的に障がいがあり、1~2歳くらいの知的発達だとしたらどうでしょうか。
理解力や判断力、想像力が十分に備わっていなくても、第二次性徴期が訪れれば、身体の変化がおきてきます。
性的な欲求が強くなり、人前での自慰行為も増えてくると・・・子どもに関わる支援者・大人が本当に焦って考えだします。
「手持ち無沙汰だからじゃないのか?そうならないように活動を準備すればよいのではないか」
「ダメだということを伝えよう」
そんな話を聞くし、私も研修に行くまではそう思ってました。
だけど、それって根本的な解決にはなっていませんよね。
わきあがってくる性的欲求を「ダメ」と禁止するだけではストレスです。やっぱり発散する方法を伝えていく必要があります。
それに、「ダメ」と制止されたら逆にしたくなっちゃうことって誰でもありませんか?
「このボタン押したらダメよ」って言われたら、私は押したくなってしまいます(^_^;)
すみません、少し話しがずれました。
数年前に、佐賀のそれいゆ という有名な事業所の生活介護を行っている施設を見学させていただいたことがあるのですが、
重度の自閉スペクトラム症の方の居室には、絵や写真を使って自慰行為の正しい方法・準備物・手順を伝える紙が、その利用者の居室の壁に貼っていました。
視覚的支援を使えば理解しているとのこと。
自慰行為はいけないことではありません。
時間はかかるかもしれないけれど、工夫をしながら以下のことを伝えていく必要があります。
- 禁止ではなく、しても良い場所・いけない場所を伝える
- 禁止ではなく、してもよい時間帯・してはいけない時間帯を伝える
- 言葉で伝えても伝わらないのであれば、写真や絵などの視覚的支援を活用する。
- それでも理解が難しければ具体物を使いながら伝えていく
おわりに
性の話をすることって日本ではタブー視されていたりもしますが、それはやっぱり”いやらしいもの”という意識が強いからではないでしょうか。
でも、被害に遭ってからでは遅いですし、加害者になってしまってからでは取り返しのつかないこともあります。
やっぱり教育の場で正しく伝えていく必要があるのではないかと思います。
支援者・親におすすめの一冊
以下の本は、性教育全般についてや、どのように性教育を行えばよいか等のポイントも書かれていて勉強になる本。
本の題名に”発達におくれがある子どもと”と書かれていますが、イラストもあってわかりやすいので、発達に遅れがある・ないにかかわらず、参考になる本です。
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